連邦宇宙軍特殊作戦群・ECOAS――対テロ対策を初めとした連邦軍内でも汚れ仕事を一手に引き受ける隊員たちは、敵味方を問わず人狩りのマン・ハンター部隊とも呼ばれ忌み嫌われる存在でもあったが、当然のようにその任務は過酷なものばかりとなる。
そのメンバーは連邦軍内部の各部署からエキスパートたちが選りすぐられ、その隊員候補たちを死と隣り合わせの作戦の中でも、生を成功を同時に掴み取れる隊員へと育て上げるのが訓練担当士官でもある俺の役目だった。
今日も隊が所有する暗礁宙域内に特別に作られた資源衛星を模した小惑星で、≪D-50T ロト・トレーナー≫を使った実戦さながらの訓練を行なっていた。≪D-50T≫という形式番号を与えられたECOAS特製の≪ロト≫だが、実は通常の作戦で使われる≪ロト≫と変わるところは何一つ無い。
ただその機体色が宙間迷彩のブルー系に彩られていると言うのだけが違いと言えば言えた。
それも勿論の事、そもそもが俺たちECOASはすべて実戦が訓練とも言えるところもあり、こうしてトレーナー機を使って訓練を行なう時間が取れる隊員は幸運な方と言えるだろう。
現に今も、ついさっきツナツーのECOAS本部から緊急通信が入り、こいつ等の配属先が急遽決定したばかりだった。
ダグザ・マックール大佐――ECOAS920隊の指令を努める男の顔を俺は思い出した。
実直を絵に描いたような優秀な男だが、そのヤツの隊が補充メンバーを必要とするとは、一体どんな作戦にあたっているというのだ。
胸の片隅に嫌な予感を抱きつつ、俺は無線のマイクを手にする。
「各員に告ぐ。訓練は終了する。お前たちの初陣が決まった。お前たち・・・生きて帰れよ・・・」
製作&執筆 2014,8.24
ユニコーンガンダムに登場した連邦軍の特殊部隊ECOAS。
ガンダム作品の中でもかなり特殊で、それでいて際立ったリアルな存在感で、好きな設定でした。
作中ではダグザ・マックール大佐率いる部隊が焦げ茶色(?)の機体<ロト>で活躍してましたが、特殊部隊が宇宙で使うんなら色はこういう感じだよなぁ…というのが、元の企画の発端でしたね。
しかしそれでは原作と離れてしまうので、どうしようかな?
そう考えた時に浮かんだ発想が、訓練機という設定でした。
ですので本来はD-50Cというコードナンバーの<ロト>が、Tに変わっているわけです。
そしてこの作品、正面からパッと見ると分かりづらいんですが、よく見ると後ろの方に訓練行動中のECOASの隊員たちがいます。
宇宙空間(コロニー)だから、ふわふわ浮いています。
作中でダグザ・マックール大佐の指揮下、バナージとの作戦に向かう前のECOASの隊員たちのプレストーリーとして楽しんでもらえれば幸いです。